翌日、眠い目を擦って起きたら既に朝の7時だった (誰か起こしてよ)
実は、宿の従業員から「この部屋は鍵って物がありません」なんて後から言われたので、もしかしたら夜中に襲われたら怖いなと思いつつ我慢して限界まで起きていたのだった。
我慢できずに夢うつつになったのは午前2時ごろだったろうか。その後は何も考えずに居眠りしてしまった。一度だけドアからカサカサ音がしたので、「ついに来たかぁ!!」と思って刃渡り5cm位の果物ナイフを握り締めて震える手でドアを開けたら、あの鶏肉を盗んだ野良犬が今度はゴミを咥えてうろついていた・・・
しかし、車で現れたいかにも旅人が機械やらなんやら持って鍵の無い部屋に泊まればデジカメの一個くらい無くなってもおかしくない状況だが、トイレで感電した以外は何も問題なく静かで快適な宿だった。(まぁ感電が一番危ない訳だが)
さて、顔洗って寝小便もしたので、昨日の残りのパンを貧しくかじりながらさっさと着替えて奇妙な村を後にしようか・・・
それから昨日後戻りした道を30km再び戻ってゆく事にする・・・
昨日は暗くて見えなかったが、田園風景と海に挟まれた美しい田舎の景色が続いていた・・
間もなく暗くて見えなかった例の未舗装地帯に再び差し掛かる。
こんな感じだったんだね。
それにしても、都市間を結ぶ重要な路線にもかかわらず、ここにはジープやバスが一台も走っていないのだった。それに深い意味があるのか、単なる気のせいなのか分からないが、ここが山賊の出る危険地帯だという噂は少なくとも現実味を帯びてきた・・・
それからさらに進むと、これだ・・・地図に道路が記されていない訳。満潮になると浸かってしまう道があちこちにあるのだ。
確かにこれでは道は作れない。
コレ見てよ、既に道路が浸水し始めてる・・・
あの水がこっちに来る前に次の村に行かないと・・・
ここも間もなく潮が入って来る・・
あの溜まった水は海水だ。
無道路地帯に満潮の度に沈んでゆく村とかもあった。
と言っても別に避ける気は無い様だが。
船じゃないと行けないとか噂に聞いた事があったが、こういう理由があったのだ。
幸い何事も無く疑惑(山賊発生区域)の場所は過ぎ去った・・・運が良かっただけなのか、それとも実は案外のどかで平和なんじゃないかと思ったりしたが、実際の所はわからない。
さて、今回ここへ到着するまでの間にホームステイ先の手配を進めていた我々だった。当初は泊まる所がなければ別にキャンプすればいいやって感じで出発したのだが、(トラックにはいつでも外泊出来るようフル機材が積んである) 何となく今回はキャンプで凌げそうな雰囲気では無かった。
そんな状況なので、出来ればどこかに知り合いでもいればいいなと思っていると、諜報部員の知り合いの従兄弟の親戚が50kmくらいの先の村に住んでいるという事がTXTの情報網から判明した。いきなり知らない人を尋ねるってのは常識からずると変だが、そこはフィリピンなので問題ない。
ただ、その相手の村ってのが携帯が通じない村らしく、事前に連絡する事が出来ない。従って人づてに聞いた村の住所と名前を頼りに初対面の人物を尋ねる事にしたのだった。(何度もこういう事をやったがフィリピンだから出来る)
それから野を超え山を越えてやっとの事で這いつくばって目的地らしき村に到着すると、外界から見放された様な小さな村で、電気と水道とガスは勿論のこと、聞いていた通り携帯電話の電波さえ通じないという、情報からも隔離された様な村だった。
村へ入って間もなく、商店らしき店があったので、○○の家はどこですか?と尋ねると、なんと5秒で場所は判明。この正面の路地を突き当たって、右に曲がって5分歩いたら水田があるからその中だという。
まぁ、とにかく歩いて見ようって事で、水田の中をとぼとぼ我々は歩いていった。
それにしても、ここは凄いところだ。水田の背後に見える山々が普通に原生林だった。
さらに行くと忽然と一軒の農家が現れた。我々は諜報員の知り合いの親戚の鳩子の友達と言う家に到着した。
農家の庭先には様々なフルーツが実っており、その庭木で地元の美しい女性が見た事も無いフルーツを収穫していた。
その、たわわに実った女性が、いや間違えた。女性がたわわに実った果実を一生懸命選別していたのだった。
その女性がいきなり木登りを始めた。なんと突然やって来た見ず知らずの訪問客に木の実をとって振舞ってくれるのだという・・・おぉ、なんという旅人に親切な村だろう・・・
不意の迷惑な訪問客に驚いた様子の老婆に今日来た事情と泊まる場所探しているという話をした。すると、最初は事情が呑み込めない様子だったが、ここはせまいので、もう一軒の親族の家にまずは泊まてはどうかと勧められた。
ずうずうしくもご提案を受け入れる事にしたのだった。これで取り合えずは宿が確保できた。
しかし、なんて素敵な場所なんだろう。
粗末な家の大きな庭には様々な種類の果実が実をつけていた。自家用の水田では稲穂が実り始めている。収穫した果実をどうするのか若い女性に尋ねると、10分歩いた所に浜があり、そこで漁師の採った貝と交換するのだと言う。なんと、物々交換か!?
それから自宅へ訪問する・・・
老婆の言った家に我々は到着し、竹で編んだ椅子で休みながら今後の予定を考えていると、浜に物々交換に行っていた女性が籠をもって戻って来た。そうかこの女性はこの家の人だったか・・
彼らの夕食のおかずだったらしいが、勧めてくれたので喰ってみる事にした・・
有難く頂くことにしよう。
(電気なし、真っ暗)
貝の構成をよく見ると、日本の岩場で見かけるゾウリムシみたいな貝や、小さくて粗末な貝ばかりだった。
この貝、貝殻だけはやたら土産物店なんかで見かけるが一度も食べた事がない。どうやって中身を取り出すのか考えていると・・
それは食べずに捨てなさいと言われた(爆)
捨てるのかよw
シャコガイのミニチュアのような貝は生臭くてまずかった。
この村では食べたら即就寝が一般的な生活スタイル。間もなく主が竹の椅子をどけて米袋を編んで作った粗末な布団を敷いてくれた。
明日は海の市場へ行ってみよう。せっかくここまで来たのだから、豊富な海の幸を頂きたい。